2025年4月、東京都文京区の本郷高等学校にて、3年生300名を対象としたデータサイエンス特別講座を実施しました。担当は佐野遼太郎 特任助教です。

講義内容
今回の講義は、3年生を対象に「実践データサイエンス」というテーマで、実習中心で実施しました。生徒たちがプログラミングとデータサイエンスを身近に感じ、実生活での活用方法を理解できるよう、以下のような実践的な内容を5本立てで行いました。
① Python入門
四則演算などの基礎的なコードを実行しながら、Pythonプログラムの動かし方やエラーとの付き合い方を学習。「まずは手を動かしてみる」というエンジニアとしての心構えを重視した導入を行いました。
② 本郷高校の進学実績を可視化しよう
高校の実データを使ったWebスクレイピングにより、大学への進学推移をグラフ化。生徒たちは自校のデータを題材にすることで、データの可視化を身近で意味のあるものとして実感できました。
③ ファッションサイトの情報を取得しよう
ファッションブランドのサイトから商品情報を自動取得し、価格比較や自動通知システムの可能性を体験。Webスクレイピングの実用性を学習しました。
④ 骨格認識AIで遊んでみよう
YOLOv8を使った最新の画像認識AIによる骨格検出を実演。生徒たちが創意工夫を凝らして「AIを騙すポーズ」を考案するなど、最先端技術を楽しく体験しました。
⑤ 数理最適化バトル
コイン投げゲームを題材に、過去100万回のデータから最適な投資戦略を導き出すケリー基準の理論を実践。期待値・確率・資産運用の最適化戦略を競い合い、「データで意思決定する」面白さを体験しました。

生徒の感想(一部抜粋)
「自分の学校のデータを使って分析するのが面白かった。データサイエンスが身近に感じられた」
「AIの骨格認識で逆立ちして騙そうとしたのが楽しかった。技術の可能性を実感できた」
「数理最適化バトルで、数学が実際のお金の運用に使えることがわかって驚いた」
「実際に手を動かしながら学べるので、理論だけでなく実践的なスキルが身についた感じがする」
「プログラミングは難しいイメージだったけど、こんなに面白いものだとは知らなかった」

講師のコメント
『まずは手を動かしてみる』というエンジニアの心構えを実践し、データサイエンスの面白さと実用性を体感してもらいました。特に本郷高校の進学実績を題材にした分析では、身近なデータから意味のある洞察を得る体験できました。データサイエンスは災害時の医療リソース配分など、社会的に重要な問題解決にも応用できる分野です。今回の体験が、将来の進路選択の一助となれば幸いです。
おわりに
デジタル社会が進展する中で、データを読み解き活用する力は、これからの時代を生きる若者にとって必要不可欠なスキルとなっています。今回の実習中心講座を通じて、生徒たちにとってデータサイエンスが身近で実用的な学問であることを実感してもらえたのではないでしょうか。
特に印象的だったのは、生徒一人ひとりが積極的に手を動かし、試行錯誤しながら学ぶ姿勢でした。実践的なアプローチにより、現代のデジタル技術の可能性を体感する貴重な教育実践となりました。
今後も電気通信大学のデータ教育センターでは、より多くの中学・高校生がデータの力を体験し、将来の可能性を広げられるよう、出張講義や教材開発に取り組んでまいります。データ活用能力を身につけることで、生徒たちが社会の課題解決に貢献できる人材として成長していくことを願っています。