2024年12月、東京都立立川高等学校にて出張講義「実践データサイエンス」を実施しました。担当は佐野遼太郎 特任助教です。

講義内容
今回の講義では、生徒たちがプログラミングとデータサイエンスを身近に感じ、実生活での活用方法を理解できるよう、以下のような実践的な内容を行いました。
① Python入門とプログラミングの基礎
四則演算や変数の概念を学び、エラーとの付き合い方を体験。「まずは手を動かしてみる」というエンジニアの心構えを重視し、Google Colaboratoryを使った実践的な導入を行いました。
② 立川高校のデータ分析
高校のホームページから応募状況のデータを取得し、進路状況を可視化。生徒たちは自校のデータを題材にすることで、Webスクレイピングとデータ分析の実用性を実感しました。
③ ファッションサイトの情報取得
ファッションサイトから商品情報を自動取得し、価格比較や検索機能を実装。「3回同じことをやったら自動化できる」という考え方を学び、LINE通知システムの可能性も体験しました。
④ 骨格認識AIで遊ぼう
YOLOv8を使った最新の画像認識AIで骨格検出を実演。生徒たちがグループでAIを「騙すポーズ」を競い合い、最低記録31%を達成。スポーツのフォーム分析への応用可能性も紹介しました。
⑤ 数理最適化バトル
コイン投げゲームを通じて、ケリー基準などの情報理論を実践。10万円からスタートして最適な戦略を競い合い、数学的最適化によって130億円という驚異的な結果を達成する生徒も現れました。

生徒の感想(一部抜粋)
「プログラミングがとても苦手で将来にも役立てられないと思っていたが、数学、プログラミングが日常生活においてとても役立つすばらしいものだと分かった」
「普段の授業ではあまり理解できなかったプログラミングが今回の企画で面白くなった」
「日常生活で3回以上したことはプログラミングできるということで、身の回りのことを自動化して将来に役立てたい」
「数学や微分は将来役に立たないと思っていたが、数学を使って賭けを行うことで何十倍にもできるとわかり驚いた」
「賭け事の最大値の話が、病人を助けることのできる最大値にも使えると聞いて、そのようなことで使えるのだと気づきすごいと思った」

講師のコメント
『まずは手を動かしてみる』というエンジニアの心構えを実践し、数学とデータサイエンスの面白さを体感してもらいました。特に数理最適化バトルでは、生徒の皆さんが試行錯誤の末に最適解に近い戦略を発見していく過程が印象的でした。今回学んだ最適化の考え方は、災害時の医療リソース配分など、人命救助にも応用できる重要な分野です。皆さんには、やりたいことを極める中で数学やデータサイエンスの力を活用してほしいと思います。
おわりに
デジタル社会が進展する中で、データを読み解き活用する力は、これからの時代を生きる若者にとって必要不可欠なスキルとなっています。今回の実習中心講座を通じて、生徒たちにとってデータサイエンスが身近で実用的な学問であることを実感してもらえたのではないでしょうか。
特に印象的だったのは、コイン投げゲームでの最適化理論が災害時の人命救助にも応用できるという視点でした。数学やデータサイエンスは単なる学問ではなく、「何かを最大化する」ことで世の中の役に立つ実践的な力であることを、生徒たちは体験を通じて理解することができました。
今後も電気通信大学のデータ教育センターでは、より多くの中学・高校生がデータの力を体験し、将来の可能性を広げられるよう、出張講義や教材開発に取り組んでまいります。データ活用能力を身につけることで、生徒たちが社会の課題解決に貢献できる人材として成長していくことを願っています。
東京都立立川高等学校
今回の講義のレポート記事:【創造理数科企画】~「エンジニアリング力」「データサイエンス力」について~
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